スティルハウスの書庫の書庫

はてなダイアリーで書いてた「スティルハウスの書庫」を移転してきました。

もしかして史上もっとも稼いだ言語、APL

APLの存在は昔から知ってましたが、ず〜っとマニアックでマイナーな言語とばかり思ってました(まず文字入力ができなさそうだし)。

でも、この書籍を読んだらそんなステレオタイプはぶっとんでしまいました。もしかして、稼いだ(もしくはスッた)お金の額ではナンバーワンの言語かもしれません。何兆ドルとか、そういうレベルです。

この書籍はモルガンスタンレーの中の人だった人(デリバティブの開発やリスク管理を担当していたエンジニア?数学者?いわゆる金融分野のロケットサイエンティスト)が書いたものです。私にとってもっとも面白かったのは、90年代の投資銀行がどんな技術で稼ぎまくっていたか詳細に(たぶん金融とプログラミングを両方知らないとちゃんと理解できないレベルで)説明されている部分。モルガンスタンレーとかソロモンブラザーズ、メリルリンチ、UBSなどの投資銀行がAPLをバリバリ使っていて(というかAPL以外の言語はロケットサイエンティストにとってはマイナーだったらしい)、高等な統計処理?や行列演算?とか角度とかを駆使して株式や債券を自己勘定で売買し、ものすごい金額を荒稼ぎしていたとのことです。でも、APLという言語そのものがボトルネックとなって巨額の損失を生み出す間接的な要因になってしまったことや、90年代以降はそうした手法が知れ渡ってしまいあまり稼げなくなったことなどが説明してあって興味深いです。

それと、本著に出てくる元モルガンスタンレーのキース・アイバーソンさん(APLの発明者の息子)は、私も当時1回ミーティングしたことがある人だったので、キースさんが当時社内やほかの会社でなにをしていたのか、いまさら分かってこれまたびっくりしました(どうやらキースさんがUBSをAPL漬けにしたことが、UBSの巨額損失とその後の合併の遠因となったらしい)。

もっとも稼いだ言語というか、もっともギャンブラーな言語と言えそうですね。